ジコカイジ

self-disclosure‐‐‐乳がんのこと、仕事のこと、生き方のことを書いていくchisa/千祥のブログ。

盗んだバイクで走り出したら大学院にたどり着いたけど、またがんになってしまって、やっと気が付いたこと。

 YOUは何しに博士課程へ? ② 

そのトシでいまさらどうして?ってみんな聞くんだよなー。

 

 

 

みなさん、大学院に行くなんて凄いわねぇと言ってくださる。しかしそのあとに、この年齢になってお金を払ってまで勉強しようと思うなんて!と続く。しかし、それを言われると私は途端にモゾモゾしてしまう。私の最も触れてほしくない場所をぐっとつかまれたような気持ちがする。聞いちゃだめ。禁止。聞くの禁止。

 

修士課程を終えた私は、博士課程に行ってみたかった。

 

易々とは行けない場所へ行って、そこからの眺めを知りたい。私を支えてくれる、私を証明してくれるものが、どうしても欲しい。

 

 私にもインテリジェンスというものがあり、きっとマネージメント能力だってあり、本当はもっと社会でやっていける人なんだよ!ということを証明しに。 

 

盗んだバイクで走り出したら、がん発覚。

 

と、ここまで書くと、アタマおかしい感満載だし、なによりヤンキー風味がする。私の人生へのアプローチには、いつもどこかヤンキー的なものが漂っている。

 

やってやんよ!と啖呵を切って盗んだバイクで走り出すくらいの勢いで、大学院に着いちゃった、のである。

 

ところがである。

 

ドクター1年になってすぐの昨年の6月に今回の右乳房のがん発見である。研究計画はなんとかでっち上げたものの、昨年から現在に至るまで、研究らしい研究は進んでいないのである(本当)。進学してすぐ病気になってしまうあたりが、我ながら呆れる。

 

 

我がヤンキー的学究生活

 

私は短大卒であった。大学への進学を希望していたのであるが、大学へ行くと生意気になって婚期が遅れるのでダメ、さらに浪人は許さないという母の希望により、短大進学と相成った。

 

いつか大学へ編入したいといういうのは、20代のころからの夢であった。仕事をやり切って、自分の中で充分な達成感を得て納得し、次のステップとしてプチリタイアし、大学へ編入する、というのが夢だったのだ。

 

実際はそうはいかなかったので、私は悶々としていた。私はどこで働いていても、明るくて楽しくて口の悪いナカジマさんという役割であった。若いうちはそれでもいい。でも40を過ぎてもそれしか期待されていない気がして、それが嫌でたまらなかった。

 

だからもうどうしてもどうしてもどうしても、私のインテリジェンスを証明してみせる!と心の中で叫んでいた(← イタイです)。私が40代半ばで大学へ編入したのは、それしか証明の方法がないように思っていたからだ(← 凄い飛躍した論理)。

 

私はどこへ行っても、明るくて楽しいチサさんなんだ

 

私の研究が、この先の谷崎潤一郎の研究史を変えるようなものであるとは思わない。誰の役にも立たないだろうし、私の論文を読む人なんかいないと思う。

奇特な人、カモン。 CiNii Articles 著者検索 - 鈴木 千祥

 

私にしか気づけない事象とアイデアがあり、それを論文にすることができるという自信はある。そういう研究をできるのはあなたしかいないよ、と教授が言ってくれたことが、これ以上研究続けるのが難しいけどどうしよう、と思っている私の心を引き留めてくれている。

 

そしてもっと凄いことに気づかされた。

 

博士課程にまでたどり着いた私はここでも、明るくて楽しいチサさん、という評価を得た。ゼミ中に、一触即発の雰囲気が漂うとき、私はそれを混ぜ返して笑いをとって、空気を入れ替えてみせる。なんとなくそういう役割をここでもしている自分がいる。そして親子ほど年の離れたゼミ生のみなさんから、明るくて楽しくて口が悪いチサさん、として受け入れられている。そこは、がんに病んで、ほとんど研究することができなくても、いつも私を迎え入れてくれる場所。

 

私はどこに行っても、明るくて楽しくて口の悪いチサさんなんだ。どこへ行ってもそうなんだ。

 

もう観念するしかない。

 

そして、それで十分なのだった。そもそも証明する必要なんてなかった。私はどこに行っても、明るく楽しい人として受け入れられているのだから、それでいいのだった。それが正しいのだった。証明するのは他者にではなく、私に証明すればよいのであった。私が私をいちばん信じていなかったのである。

 

私がこのシンプルな事実を認めるためには、盗んだバイクに乗って大学院までたどり着き、そしてまたがんになる必要があったのかもしれない。なんと不器用で、遠回りをしたものか。

 

いま、休学がするか否か、瀬戸際にいる。後期の学費をどう工面するか。どうやって研究を進めるかの瀬戸際。なんとか続けたいけれど。死ぬまでに博論書けたらいいな。それが無理でも、せめてあと何本かは論文書きたいな。

 

 盗んだバイクで走り出すヤンキー魂で、こんなに遠くまでこれたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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