お姉ちゃんお願いします殺してくださいと妹に言われた翌日。予断を許さない状態が続く夜間と違い、日中は穏やかな時間を過ごせていた。夜間に比べれば、妹の様子は落ち着いている。とはいえ全身ではあはあはあと苦し気な努力呼吸は続いていた。
そんな日中、ふと目を開けて、私に話しかけてくることがよくあったが、そのタイミングはいつも唐突だった。お姉ちゃん、緩和ケアの病院探して。そこで体調を整えてからまたここに戻ってくる。そしてまた治療するの。
どうしてそういうことを言うのかよくわからなかった。緩和ケアのある病院へ転院して体調を整えようなど、誰も言っていない。いつからか、妹の中ではそういうことになっていた。
うんうんそうだね。もういくつか申し込んだよ。でも混んでいるからちょっと待っているんだよと、話を合わせた。お願い殺してと言われた翌日でも、緩和ケアへ行って体調を整えて治療をするために、ここに戻ってくると、何度も言った。
妹は、殺してと懇願した夜が明けて、日中には治療を続けたいと言った。死を想い生を望んだ。その両方を苦しみながら行き来していた。その行き来は毎日続く。
お姉ちゃん。わたしもう、いいかな。体全体で努力呼吸しながらそう言って死を受け入れたのは、亡くなる1週間ほど前になってからのことだった。それ以降はほとんど話すことができなくなった。