岡田版「白い巨塔」をチラ見。
そもそも「白い巨塔」といえば田宮二郎だ。絶対だ。
田宮二郎の「白い巨塔」は映画版とTV版があり、田宮は財前五郎を2度演じている。映画版もダークでよい。ちなみに映画ではケイ子は小川真由美が演じているのだが、これがTV版の太地喜和子に負けず劣らずよい。
岡田くんが田宮二郎を凌駕するとは思えず、五夜連続と言われても困るなあ、ということで見る気はさらさらなかったのだが、財前五郎の転落の様子が描かれるだろう、最終夜の放送だけ、ちょっと見てみた。
財前五郎、すい臓がんステージ4ですって。あら。難しいがんだよなあ。手術したけれど手の施しようがなく、閉じちゃう。
浪速大学病院には緩和ケアがないらしい。
岡田/財前はなすすべもなく、亡くなるまで七転八倒の苦しみ方であった。そりゃあもうすさまじい苦しみ方なのだ。
すい臓がんの終わり方とは、あんなようなのか? そりゃ何もせずほっとけばああかもしれないが、もっと痛みを取るケアできるのでは?そもそも浪速大学には緩和ケアがないのか?緩和ケア医はいないのか?ーーーいなかったんだろうなあ。
財前五郎教授の死後、緩和ケアの重要性が認識されて、浪速大学医学部病院に緩和ケア病棟ができました、って後日談があるのかもしれないが。
「緩和ケア」といえば、妹のことを思い出す。
妹があと1か月です、と宣告されてからも、その苦しみ方は凄まじかったが、それでもなんとか工夫をして、痛みを取るようには病院も頑張ってくれていた。しかし、「最期まで居てくれていいんですよ、でも緩和ケアの病院を探してください、緩和ケアに移っていただくのも考えてください。もしくはご自宅に戻って在宅ケアを受けるのも可能ですよ」と、2日1度、病棟の担当医が言う。本当にきっかり2日に1度言う。オウムのように言う。
(いやいや。こんなに苦しんでる人を動かしてもいいの?平気?そもそも、こんなになるまで腰椎穿刺せず、髄膜炎です余命1ヶ月です、ってシラっというあなたたちが最期まで責任もって見なさいよ)、っていうのは私の心の声。だからはいわかりました、といいお返事しておいて、私は妹を動かす気はさらさらなかった。なかったんですよ、T先生、M先生。
緩和ケアに移行する時期が遅すぎたように私には思えた。もっと家族や友人と自由に交わり、最期の時間を有意義に過ごすためのものであってほしかった。そういう側面を求めてはいけないのだろうか。静かに、家族だけで過ごす時間がほしかった。
しかし現在、緩和ケアはそういう風には機能してはいないようだ。最期を穏やかに過ごすことができる人は、少ない。
財前五郎が、因果応報的に苦しんで死ぬのが、あの作品のキモなのかもしれない。でも彼が静かに緩和ケアで過ごし、過去の自分を振り返って内省して命を終える、っていうのも、今後はあってもいいと思う。