治療終了後のゴールデンウイークは自宅で
2018年のゴールデンウィークが終わった。今年は治療が一段落したばかりということもあり、特に予定は作らず家で過ごした。体調もよく、近所の公園を散歩したり、買い物に出たり、二日連続で外出することもできた。ところがその翌日から二日連続で寝込む。自分の体調をまだ信頼できないことを知ったGWだった。
体調がすぐれないときの密かな愉しみ
抗がん剤の副作用で体調を崩しているとき、テレビやビデオ、PCを見るのはもちろん、本を読むことも難しかった。いまでもPC作業や読書のあとの疲労感は強く、長時間の作業のあとは倒れ込んでしまう。視覚を使う、同じ姿勢を長時間保つ、そういう普通の日常動作をすることで、体力を消耗してしまっている。
体調がすぐれないとき、音楽やラジオを聴くのが楽しみだった。中でもラジオのテレフォン人生相談は、一度聴いたらやみつきになるほど中毒性のある面白さで、毎日、放送はあるのだけれど、もっとたくさん聴きたくて検索してみると、youtubeにあるわあるわ。
完成した様式美
パーソナリティー(司会役)とアドバイザー(相談役)
1965年(昭和40年)開始というから、53年間の歴史をもつテレフォン人生相談。すでに完成された様式美があるといっていいほど、練られている。
パーソナリティーは、以下の面々が担当。現在は心理学者の加藤諦三や、医師で作家の今井通子、作家のドリアン助川、タレントの柴田理恵など。
アドバイザーは幼児教育研究家の大原敬子、作家の三石由起子や、弁護士の大迫美恵子、中川潤、塩谷崇之があたっている。
ちなみに曜日によってパーソナリティーとアドバイザーは異なる。
2018年5月現在の出演者はこちら。
テレフォン人生相談 | 毎週月~金曜日 11:00~11:20 | ラジオFM93+AM1242 ニッポン放送
まず、パーソナリティーが相談者の電話を受け、
・年齢
・既婚か未婚か
・家族構成 それぞれの年齢 子供の有無・同居か別居かなど・既婚か未婚か
・相談内容と状況
以上の4点を聞き、相談者の置かれている状況と相談内容を整理していくのだが、相談者の話があっちへこっちへと飛ぶため、骨の折れる作業となるが、なんとか聞き出して、アドバイザーへとつなぐ。アドバイザーは、聞き出された情報をもとに、本音や落としどころを探っていくのだが、この過程が強烈に面白い。
相談者から投げられる相談内容は、法律に関することもあるけれど、結局は男女、夫婦、親子、姑と嫁、友人、同僚など、人間関係の悩みだ。
自己の内面が問題となって投影されているだけ。
驚くべきことにたいていの場合、相談者の語る相談内容は、あくまでも表向きのものであって、アドバイザーが不明点を問いただしていくと、相談内容に至るコトの経緯や、心理状態など徐々に本音がむき出しになり、当初の相談など吹っ飛んでしまう。全く予測不可能なミステリーのようなのだ。
私のお気に入りは、アドバイザーの弁護士・大迫恵美子である。大迫は相談者の話から、本音を抉り出し、ばっさりと切る。もうグウの根もでないほどに切る。毎回、人間を正確に見極める力と、相談者がなかなか見せまいとする本音に、じりじりと迫っていく大迫の胆力に度肝を抜かれる。
大迫美恵子が抉りだし、本音を相談者の目の前に突き出す。これだけだとあまりに救いがないが、最後にパーソナリティーに戻される。加藤諦三ならそれを心理学的アプローチで説明し、諭す。相談者は自身の心の状態を正直に認め、知ることで納得へと導かれる。
何本も聴いてわかったことがある。ここで明らかになるのは、世の中にはあらゆる悩みがあるが、たいていは自己の内面が問題となって投影されているだけ、ということ。
いまの私の心を乱すことの大半も、やはりそうなのだった。私は怖かった。またがんになったことが。がんの治療が。治療後の生活が。そこから逃れようと焦って、ずっと右往左往しているだけなのだ。しかし私がすべきことは、この恐怖をひとつひとつ、冷静に見つめていくことなのだ。
私には大迫恵美子のような知力と胆力はないが、頭をもたげる恐怖から目をそらさずに、自分と丁寧に付き合っていければいいのだと、テレフォン人生相談から学んだのだけれど。難しい。
#今週のお題「ゴールデンウィーク2018」#テレフォン人生相談 #大迫恵美子 #加藤諦三